こんにちは、フクオと言います。
私は個人事業主として矯正歯科治療などの事業を営んでいるため、銀行口座に振り込まれた報酬や使った経費などのお金の流れを帳簿につけています。
会計帳簿には「勘定科目」と言って、何に使ったかが分かるための項目があります。
例えば、勤務する医院に行くための電車賃なら「旅費交通費」。
個人事業主に興味がある勤務医の方の中には、個人事業主は帳簿をつける必要があると知った方もおられるかもしれませんが、勘定科目ってなんだか難しそうでよく分からないですよね。
歯科医師の個人事業主がよく使う勘定科目の具体例を教えて!
個人事業主に興味がある勤務医の皆さまの中には、こんな悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
特に、具体的に個人事業主について調べて準備をはじめている方は、会計帳簿につける勘定科目の例を詳しく知りたいですよね。
かく言う私も、個人事業主になる前に、同じ悩みを抱えていた時がありました。
この記事では、個人事業主で歯科医師の私が、会計帳簿に記載する勘定科目の具体例を紹介します。
記事の内容は、私の顧問をして頂いている税理士の先生に教えてもらった内容も含まれているため、信用性は担保されているかと思います。
仕訳の基本
個人事業主は複式簿記(「借方」と「貸方」に分けて)で帳簿をつけますが、発生した取引を借方、貸方の勘定科目に分類することを「仕訳」と言います。
例えば、電車賃の勘定科目は「旅費交通費」なのですが、
現金で電車賃を支払った場合の仕訳は、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 1,000 | 現金 | 1,000 | a駅-b駅(A医院へ)の電車運賃 |
となります。
複式簿記では、「借方」は左、「貸方」は右に書く。
借方?貸方?と思うかもしれませんが、
資産、費用が増えたり、発生したら、借方に。逆に減ったら、貸方に。
負債、純資産、収益が増えたり、発生したら、貸方に。逆に減ったら、借方に記載されます。
上記の例の場合、旅費交通費という費用が発生したため左側の借方に、現金という資産が減少したため右側の貸方に記載します。
摘要には、具体的な内容を記載してください。
仕訳は、最初は難しいかもしれませんが、やっていく内に自然と慣れてきます。
ここからは、歯科医師がよく使う勘定科目の具体例をご紹介しますが、
仕訳や簿記について、もっと勉強したい方には、
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医院からの報酬は「売上」
医院からの報酬を仕訳する際の勘定科目は「売上」です。
6/10にA医院で診療業務を行い、A医院院長から即日現金で報酬を受け取った際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 100,000 | 売上 | 100,000 | A医院での6/10分の売上 |
7/20にB医院で診療業務を行い、請求書を作成し、B医院院長にメールで請求書を送付した際の仕訳は↓(売上の計上日は役務提供が行われた日が原則ですので、請求書メールを送付したのが後日でも診療業務を行った7/20の日付で仕訳を行います。)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
売掛金 | 100,000 | 売上 | 100,000 | B医院での7/20分の売上 |
「売掛金」とは商品やサービスを提供したけど、まだ代金を受け取っていない「ツケ」のことです。
売掛金は後日支払われる予定の資産であるため、売掛金が増えた時には借方に記載します。
7/30にB医院からの報酬(7/20分)が普通預金口座に振り込まれた際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
普通預金 | 100,000 | 売掛金 | 100,000 | B医院での7/20分の売掛金の入金 |
報酬が支払われると、売掛金は無くなるため、貸方に記載します。
書籍は「新聞図書費」
歯科治療の書籍など事業に関係する書籍の購入費用は「新聞図書費」。
事業に関する書籍としては、個人事業主関連の書籍や簿記関連の書籍も含まれます。
歯科治療の書籍を現金で購入した際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
新聞図書費 | 22,000 | 現金 | 22,000 | Contemporary Orthodontics, 〇書店 |
新聞図書費という費用が発生したため、借方に記載します。
文房具などは「消耗品費」
文房具などの事業に関わる備品の購入費用は「消耗品費」。
消耗品費とできる基準は「使用可能期間が1年未満、または金額が30万円未満」です。
ワイヤーなどの診療に使う材料は「材料費」
ワイヤーなどの診療に使う材料の購入は「材料費」。
プライヤーなどの器具は金額により「消耗品費」、「一括償却資産」、「器具備品」
歯科治療に使用するプライヤーなどの器具は、その金額次第で会計税務の処理が変わり、「消耗品費」もしくは、固定資産である「一括償却資産」、「器具備品」。
- 10万円未満:消耗品費
- 10万円以上30万円未満: 消耗品費とする方法と、 10万円以上20万円未満の場合は一括償却資産とする方法(20万円以上30万円未満は消耗品費になる)の2つがある
- 30万円以上:固定資産として計上し、勘定科目は器具備品
消耗品費はその年に全額を経費計上します。
一括償却資産に計上すると3年で経費計上することになりますが、償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象から外れます。
償却資産税は取得価額の総額が150万円を越えた場合に課税(税率は1.4%)されるため、「今後いろんな資産を積み上げてもそこまでいかないよ」ということであれば、消耗品処理でも良いと思います。
安全サイドを取るなら、10万円以上20万円未満の備品は消耗品費ではなく、一括償却資産として処理する方が無難です。
ちなみに、10万円未満の備品はいくら購入しても課税対象外で、150万円までのカウントに入ってきません。
税理士の先生への顧問料は「支払手数料」
税理士の先生への顧問料は「支払手数料」。
12/20に11月分の顧問料が普通預金から引き落とされた際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
支払手数料 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 | 税理士〇先生の11月分顧問料 |
支払手数料という費用が発生したため、借方に記載します。
個人事業主の事業年度は1/1~12/31ですので、12/31に帳簿を締め切るのですが。
12月分の税理士の先生への顧問料を翌年1月に支払う予定の場合、12月には顧問料を支払ってないけど支払う義務が生じているため、顧問料の未払計上をする必要があります。
12/31に顧問料の未払計上をした際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
支払手数料 | 10,000 | 未払手数料 | 10,000 | 税理士〇先生の12月分顧問料 |
未払手数料は支払う義務という負債であるため、貸方に記載します。
自動車関連の経費は「車両運搬具」、「車両費」
自動車の購入は「車両運搬具」、自動車に関わる費用は「車両費」。
車両費としては、ガソリン代、高速道路利用料金、車両保険の保険料、車検費用、自動車税、車の修理費用、自宅の駐車場代などが挙げられます。
自動車に関わる経費は、家事按分して事業用割合を経費にすることができます。
家事按分について詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。
プライベート用として50%、事業用として50%使用する80万円の自動車を現金で購入した際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
車両運搬具 | 400,000 | 現金 | 400,000 | 自動車80万円(按分比率50%),〇モーター |
車両運搬具という資産が増えたため、借方に記載します。
ガソリン代などの費用は「車両費」という勘定科目を使うこともできますし、別の勘定科目として、
ガソリン代は「旅費交通費」、
車の保険料は「支払保険料」、
自動車税は「租税公課」、
自宅の駐車場代は、自宅兼事務所の家賃と同じように「地代家賃」として処理することもできます。
スマホ使用代は「通信費」
スマホ使用料やインターネット料金は「通信費」。
自動車に関わる経費と同様に、家事按分して事業用割合を経費にすることができます。
年会費は「支払手数料」
年会費は「支払手数料」または「諸会費」。
事業用クレジットカードや所属学会の年会費を経費として処理する際はこの勘定科目を使用します。
セミナー参加費は「研修費」
歯科のセミナーや個人事業主向けの勉強会への参加費用は「研修費」。
個人事業主として簿記を勉強して、その検定試験を受ける際の受験料もこの研修費です。
事業関係者との会食は「接待交際費」
事業関係者との会食費用は「接待交際費」。
勤務先医院の院長やスタッフ、歯科材料を仕入れている材料屋さんなどの「事業で関係している方と」ということが大前提ですので、事業と関係のない友達や家族との会食では経費として認められません。
事業用クレジットカードでの決済は「未払金」
事業用クレジットカードでの決済(支払い)は「未払金」。
8/10にCストアで事業用のボールペンをクレジットカードで買った際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
消耗品費 | 400 | 未払金 | 400 | ボールペン, Cストア, 〇カード |
8/25にクレジットカードの未払金が事業用の普通預金口座から引き落とされた際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
未払金 | 400 | 普通預金 | 400 | 〇カード8月分引落 |
ただ、上記のように仕訳をするのは手間が大きいため、未払金の勘定科目を使わずに、銀行口座から引き落とされた時にまとめて記帳する形でも問題ありません。
引落時のみの記帳にする場合は、購入と支払が年をまたぐ年末のみ、未払金を計上して、年内の経費にしてください。
個人と事業でのお金のやり取りは「事業主貸」、「事業主借」
個人事業主は、事業で得たお金で日々の生活費をまかなっていて、反対に、プライベートの銀行口座から事業用のお金を工面することもあるはずですよね。
このため、仕訳には事業用のお金の流れだけでなく、個人事業主のプライベートのお金との出入りも関係してきます。
この時に使用する勘定科目が「事業主貸」、「事業主借」。
事業主貸は、事業用のお金を家計に、
事業主借は、家計のお金を事業用に補填した際の仕訳に使用します。
事業主貸は、事業主がプライベートにお金を貸した、
事業主借は、事業主がプライベートからお金を借りた、ような扱いです。
事業用の普通預金口座から家計(個人の財布)に引き出した際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
事業主貸 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 | 生活費 |
家計(個人の財布)から事業用の普通預金口座に入金した際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
普通預金 | 30,000 | 事業主借 | 30,000 | 家計から事業資金の追加 |
プライベートのクレジットカードで事業用の新幹線切符(事業所得を得ているB医院へ行くため)を購入した際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 20,000 | 事業主借 | 20,000 | c駅-d駅(B医院へ)の新幹線運賃 |
事業用のクレジットカードが無いと、仕訳がややこしく難しくなってしまうため、個人事業主は事業用クレジットカードを持っておいた方が良いでしょう。
開業前の費用は「開業費」、「元入金」
個人事業の開業前にかかった費用は、領収書などをしっかりと保管しておくことで「開業費」という経費にできます。
口腔内写真撮影用のカメラを購入した際の仕訳(仕訳の日付は開業日)は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
開業費 | 70,000 | 元入金 | 70,000 | 口腔内写真撮影用のカメラ, 〇年〇月〇日購入, eストア |
ただし、10万円を越えるもののなかで資産計上すべきものは、開業費ではなく、器具備品など資産に計上してください。
開業時に事業用の普通預金口座に300,000円を入金した際の仕訳は↓
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
普通預金 | 300,000 | 元入金 | 300,000 | 開業資金 |
元入金という純資産が増えたため、貸方に記載します。
まとめ
青色申告をする個人事業主歯科医は、上記のような勘定科目を使います。
ある程度の勘定科目を把握しておけば、会計ソフトを用いることで簡単に帳簿をつけることができます。
この記事を読んだまだ個人事業主ではない、勤務医、フリーランスの歯科医師、医療人の方が個人事業主となり、より良い生活を送れることを願っています。
今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。