開業(事業の始め方)

歯科医師の給与を事業所得にできる条件まとめ

歯科医師の給与を事業所得にできる条件まとめ

こんにちは、フクオと言います。

私は勤務医として働いてもいますが、個人事業主として開業し、個人で事業を営んでいます。

事業の内容は主に矯正歯科治療で、働いている歯科医院からの報酬を事業所得として支払ってもらっています。

個人事業主に興味がある方もいるかもしれませんが、歯科医師の方にとって、事業所得って耳慣れなくて、よく分からないですよね。

若手の歯科医師
若手の歯科医師
個人事業主が節税に有利って聞いたけど、自分もなれるの?

事業所得はフリーランスドクターだけのものなの?

給与と事業所得は違うの?

勤務医の皆さまの中には、こんな悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

特に、1つの病院や診療所だけではなく複数の施設で診療している方、勤務先を増やそうと考えている方は収入も増え、上記のような悩みもありますよね。

かく言う私も、給与所得だけしか無く、同じ悩みを抱えていた時がありました。

結論から言うと、複数の医院で診療する歯科医師の方は、いくつかの条件を満たせば、給与所得ではなく事業所得として報酬を受け取れる可能性があります。

給与所得ではなく事業所得にできれば節税にも有利です。

この記事では、歯科医師として働き事業所得を受け取る私が、歯科医院からの報酬を事業所得として受け取るための条件を紹介します。

記事の内容は、私の顧問をして頂いている税理士の先生に教えてもらった内容も含まれているため、信用性は担保されているかと思います。

「事業所得」と「給与所得」の違い

勤務先からの収入を「給与」ではなく「事業所得」として受け取ることで、経費の計上などによって節税できることを知っている勤務医の方もおられるのではないでしょうか。

所得は法律によって、給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得、雑所得など10種類に分けられています。

「給与所得」は雇用契約を結んだ雇用主から支払われる所得。

「事業所得」は事業から生じた所得です。

では、この区別の基準はどこにあるのでしょうか?

国税不服審判所の裁決の事例から、事業所得と給与所得の区別の基準を考えます。

事例は昭和54年11月22日の裁決です。

ここでは、弁護士さんの顧問契約による報酬が「給与所得」ではなく「事業所得」として該当すると判断されました。

事業所得は、自己の計算と危険において対価を得て、継続的に行われる業務から生じ、労務の提供が独立性をもってなされる。

参照:国税不服審判所(昭和54年11月22日裁決)

この判例や昭和56年4月24日最高裁判決(弁護士さんの対価が事業所得か給与所得か争われた)によると、事業所得となるかは、

  • 自己の計算と危険において独立して行う
  • 営利性、有償性を有する
  • 反復継続性がある
  • 社会的地位が認められる業務

上記を総合的に勘案して判断すべき、とされています。

条件①自己の計算と危険において独立して行う

「自己の計算と危険において」とは、事業主が自身で事業の計画を行い、自身のお金や労力を費やしているかどうかです。

これが認められる条件としては、

  • 自身で経費を負担している、物的設備(事務所や機械装置)を有している。
  • 不可抗力による損失が生じる可能性があり、その場合に報酬支払者に請求できない。
  • 一定額の報酬が支払われることが約束されていない。

ということが挙げられます。

歯科医師の場合、事務所や機械装置までは無理でも、例えば器具(矯正歯科ならプライヤー類など)や材料を自身の負担で揃える必要があるということになります。

ただ、これに関しては、「技術の提供」という形の契約であれば経費負担をしていなくても事業所得として構わない、経費負担をしていないのも院長が日ごろから利用している業者から仕入れた方が価格が安いからという理由で、と言う税理士さんもいました。

また、一定額つまり固定給だと給与としてみなされてしまうため、報酬は固定給ではなく、歩合給もしくは固定+歩合給(日給+出来高のような形)が良いでしょう。

「独立」とは、報酬支払者(医院、院長など)の指揮監督下にない、ということです。

例えば、

歯科医師の場合、勤務先院長に指示やチェックをしてもらっていると「独立」とは言えません

また、時間的拘束を受けないこと。

例えば矯正歯科医の場合、矯正治療の患者さんの診療さえすれば、クリニックの始業時間や終業時間には縛られないはずで、これは時間的拘束を受けていないと言えると思います。

勤務時間の定めがないことが求められますので、医院ではタイムカードは押さないようにしてもらってください。

そして、勤務場所の定めがないこと。

これについては、歯科医師では条件が難しいと思いますので、専門家である税理士さんとよく相談してみてください。

また、報酬支払者側が「報酬」ではなく「給与」として経理処理していたことが事業所得には当たらない理由のひとつとして判断されている過去の判例もありますので、報酬支払者の医院での経理は「給与」ではなく「報酬」として処理してもらってください。

条件②営利性、有償性を有する

「営利性」とは利益を得ようとしているか、「有償性」とは行為に対する給付が無償ではなく有償であるか。

歯科医師が医院で診療をする場合、歯科医師は診療をすることで報酬という利益を得ることを目的として行っていて、また、それに報いるために診療をしているので、特に注意する必要はないかと思います。

条件③反復継続性がある

「反復継続性」を認めてもらうためには、月に1回の診療を毎月や、週に1回を毎週のように、ある特定の施設での診療を続けていく必要があります。

つまり、スポットでのヘルプのバイトなどは該当しません

条件④社会的地位が認められる業務

「社会的地位」に関しては、歯科医療は問題ないのではないでしょうか。

まとめ

事業所得に該当するかは、

  • 自己の計算と危険において独立して行う
  • 営利性、有償性を有する
  • 反復継続性がある
  • 社会的地位が認められる業務

上記の基準に基づいて様々な観点から総合的に判断されることとなります。

歯科医師で該当すると考えられる事業内容としては、例えば、

自身で器具材料を負担し歩合で働く矯正歯科医や、

器具材料を負担し1本いくらでデンタルインプラントを埋入する口腔外科医

などが考えられます。

ただ、この判断はとても難しいため、実際に個人事業主として始める場合にはまずは専門家である税理士さんと相談してみてください。

この記事を読んだまだ個人事業主ではない、勤務医、フリーランスの歯科医師、医療人の方が事業所得についての知識を手に入れて、より良い生活を送れることを願っています。

今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。